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大日本印刷・太陽光と光触媒を利用して水から水素を取り出す技術で脱炭素社会に貢献
大日本印刷株式会社(北島義斉社長、以下:DNP)はこのほど、2021年度から2030年度まで実施される「人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem、アープケム)」の第2期の研究開発活動に参画することを発表した。この活動は、再生可能エネルギーである太陽光を用いて、二酸化炭素(CO2)を排出することなく製造できる「グリーン水素」の量産技術の確立を目指している。
水素エネルギーは使用時にCO2を排出しないため、脱炭素に貢献する次世代のエネルギーとして注目されている。しかし水素の大半は現状、天然ガス等の化石燃料から取り出す方法で製造されており、脱炭素化に向けては、製造過程で発生するCO2を回収して地中に埋める技術などと組み合わせる必要がある。
こうした課題に対して、ARPChemが開発する水素製造技術は、再生可能エネルギーのひとつである太陽光を用いて水から水素を取り出すことができるため、製造時にCO2を排出しない「グリーン水素」を製造することができる。
【ARPChemへの参画について】
経済産業省主体で形成した研究組合・ARPChemは、太陽光と光触媒を利用して製造した水素とCO2から化学品をつくり出す「人工光合成」の中で、特に水素を製造する技術の実現を目的としている。ARPChemが取り組む光触媒を用いて水素を製造する方式はシステムが単純であり、現在、グリーン水素の主流と言われる再エネ発電利用の電気分解による水素製造技術と比べて消費電力を大幅に抑制できるとともに、水素のコストを低減できる可能性がある。第1期(2012~2021年度)の活動では、人工光合成の大規模な実証実験に世界で初めて成功するなどの成果があった。
第2期(2021年度~2030年度)では、企業や大学・研究機関が独自技術等の強みを持ち寄って、より高効率な光触媒と水素分離膜の開発や安全性の検証をテーマとして、社会実装を見据えた技術開発を進めていく。
DNPは、印刷プロセスに基づいて応用・発展させてきた独自の「P&I」(Printing & Information:印刷と情報)の強みを保有している。ARPChemの活動においても、機能性材料を均一にコーティングする技術、微細な形状を賦型する技術、機能性のフィルムやシートを積層するコンバーティング技術などを活かしていく。また、独自の結晶化技術である「フラックス法」をもとに光触媒の研究を進める信州大学の手嶋教授との共同研究をはじめ、多くの大学や研究機関、企業との連携を通じて、水素を効率的に取り出せる触媒シートの開発などに取り組んでいく。
今後の展開としては、DNPは持続可能なより良い社会の実現に向けて、「P&I」の強みを掛け合わせ、パートナーとの連携を深めることで、社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値の創出に取り組んでいく。また、常に地球環境と経済の両立を目指して企業活動を推進しており、今回のARPChemへの参画を通じて、多くのパートナーとの水素エネルギーの研究開発を加速させる。
なお、この活動は「2050年カーボンニュートラル」に貢献する技術を支援する国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業」として採択されている。