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【ジャグラ・岡本泰会長に聞く】「ジャグラコンパクトDX」を軸に組織の活性化を図る

2022年6月に開催された一般社団法人日本グラフックサービス工業会(以下:ジャグラ)の「第57回定時総会」で会長に就任して以来、全国各地の会員のもとに足を運びながら、組織の活性化に取り組んできた岡本泰会長。ジャグラ文化典高知大会では「絆をカタチに今こそグラフィックサービス業へ転換しよう」をスローガンに掲げ、不退転の決意で速度を上げて「グラフィックサービス業」への転換を図り、中小印刷業の明るい未来を築いていくことを参加者に示した。本紙では、岡本会長に今後の取り組みなどについて話を聞いた。

ビジネスにつながる質の高いサービスを会員に提供へ

本紙 昨年6月にジャグラの会長に就任されて1年が経過しました。
岡本 この1年間、全国の地方協議会の会合に参加させていただきましたが、先輩方も若手のメンバーも私を歓迎してくれ、膝を突き合わせながらジャグラに対する要望や想いを率直にぶつけてくれました。
先輩方からは「次の世代の人たちにジャグラの存在価値を良い形でつないでほしい」といった意見が出されるなど、息子たちの世代に直接は言えないことを、中間世代の私に言ってくれました。
一方で、二世会の「SPACE-21」のメンバーからはジャグラの未来について建設的な意見が出され、双方から本音を聞ける機会に恵まれ、課題を抽出することができた1年となりました。
本紙 そうした状況の中で会長として初となるジャグラ文化典が高知で開催されましたが、その中で収穫できたことや見えてきた課題はありますか。
岡本 会長として初めてのジャグラ文化典を開催でき、皆さんに感謝しています。高知大会が盛大に開催できたのは、高知支部や四国地方協議会の応援があったからであり、とても感謝しています。特に高知支部は5人という少人数で全国の皆さんをおもてなししたことは、参加された方の記憶に残ったと思います。
1年間、全国の地方協議会を訪問して皆さんとお話をしてきたことを踏まえ、やらなければいけないことがハッキリしました。そうした点を踏まえて、会長として1年間取り組んできたことが間違いではなかったことを証明してくれた大会になったと思っています。
課題としては、継続的に文化典が開催できるようにするために参加者やスポンサーの負担を軽減し、経費を節減しながらコンパクトな内容にしていくためのルールを作りについて、開催地と本部が連携して時代の流れに併せて見直す必要があると思いました。
本紙 高知大会は全国から385名という多勢の参加者が旧交を温める機会となりました。岡本会長もいろんな方とお話されたと思いますが、特に記憶に残っているシーンはありますか。
岡本 初めて息子さんを文化典に連れて来られた方から「これから息子をよろしくお願いします」と言われ、その時に若い世代がジャグラの事業に関心を持ってもらうことができれば、未来は明るいと実感できたことが一番記憶に残りました。
本紙 若い世代がジャグラの活動に関心を持てば、組織は活性化できるという実感を得ることができましたね。
岡本 高知大会が何であったかというと、印刷業界を盛り上げていくために、ジャグラが突破口となるべくために1年間活動してきたことが間違いでなかったことを証明する場となりました。その実績をもとに、次年度の広島大会に向けてさらにステップアップしていきます。
先輩たちの心の拠り所となり、若手にはビジネスチャンスを掴むためのヒントが満載された存在意義のある業界団体になることを目指しています。その絆を高め、より具体性を持ったビジョンを印刷業界に示していくために会員相互の交流を図っていきます。
本紙 さらにステップアップしていくために次の段階に入るということですね。
岡本 昨年開催した愛知大会でジャグラは印刷業界の反転攻勢の狼煙(のろし)を上げました。高知大会でその準備が整い、広島大会でさらに実証し、その次の東京大会で周年を含めて確固たるものへ変化させてきます。

今こそグラフィックサービス業に転換を
広島大会で1期2年の集大成を示す

本紙 それらを具現化させていくための施策については、どのようにお考えでしょうか。
岡本 これまでの文化典では、会員相互のコミュニケーションを図ることが主となっていました。その部分は今後も大切にしていきますが、そこに印刷業界全体を変えていくためのメッセージを加え、未来へ向けて何をなすべきかのコンテンツを示していきます。
ジャグラでは昨年から「ジャグラコンパクトDX」の推進に力を入れています。向かって行く船を造り、「目的地を定めて出航します」と宣言したのが昨年の愛知大会です。その第一チェックポイントが高知大会であり、ここまで進められたといったことが証明できました。これからは次の広島大会に向けて軌跡を示しながら実績を出していきます。
本紙 進むべき方向性が定まってきたという実感を得ることができたようですね。
岡本 変化の激しい今こそ「グラフィックサービス業に転換する」「絆をカタチにすること」が大切になります。会員同士の絆を高めていくために、お互いが持っているノウハウをオープンにして活用し合い、自分たちの商売を発展し続けていかなければなりません。
今までは印刷物にどのような付加価値を付けるかといったことが大切でしたが、印刷物を作れること自体を付加価値にするためにはメインビジネスはどうすれば良いのか、そこに結びつかないと組織の存在意義はないと考えた時に「創注」がキーワードになります。そうした業界になるための情報を会員の皆さんに発信したいと考えています。
本紙 次年度の広島大会に向けた抱負について示して下さい。
岡本 広島大会のテーマは「高めた愛を広げよう」です。昨年の愛知大会でジャグラの反転攻勢の狼煙を上げ、その方向性が高知大会で進化しました。来年の広島大会では実績を声高らかに、明確に大々的に発表できるように取り組んでいきます。
私の任期である1期2年の集大成として、ジャグラがこれから向かっていく方向が示される場にしていきたいと考えています。先輩たちには若手に任せて大丈夫、世代交代をして、どのような未来になるか、ワクワクしながら先輩たちが語り合う中で、若手は青ざめながら、そろそろ真剣に考えていかなければならないといった大会にしていきたいです。

絆という名の人となりの育成
魅力あるコンテンツを用意する

本紙 あらためてお伺いしますが、ジャグラに加入することで得られものとは何でしょうか。
岡本 私が思うには人となりが磨かれることだと思います。肝心なことは、ジャグラが今まで築いてきた絆という名の人となりの育成です。これが組織としての最大の魅力です。そこを楽しみながら勉強し、技術と知識が得られる。これ以上の組織は印刷業界にはないと自負しています。
本紙 組織拡大についてはどのようにお考えでしょうか。
岡本 どの業界団体も同じだと思いますが、会員が減少傾向にあります。ジャグラ愛知県支部では2年前に組織拡大のために、印刷会社のリストを作成して回ったことがありましたが、行くと半分以上の会社が存在していない現実と、事業を続けておられても、「自分の代で終わりにする」といった会社が多くあるという現実に直面しました。会員数の減少率は、ジャグラは低い方ですが、減り続けていることは確かです。どこかでV字回復できるように考えていかなければなりません。
本紙 その打開策はあるのでしょうか。
岡本 あります。来年から本格的に動き出します。会長就任後の1期2年は、ジャグラに入ってみたいと思われる魅力的なコンテンツを用意することに注力しています。中身を少しずつ変えていき、「ジャグラは楽しい」「ビジネスにしてもコミュニケーションにしてもジャグラでしか学べないことがある」といった土台を作ってから組織拡大に着手します。そのキーは印刷業だけにこだわらないことです。ジャグラは印刷業をベースに、グラフィックサービス業への転換を目指していますが、その定義を作成していきます。
印刷産業を支えていくためには、市場の要求に対してどのような産業と手を組んでアプローチしていけば良いか。そこを考えれば、グラフィックサービス業としてのジャグラはどのような会員が増えていくべきなのかが見えてきます。
本紙 グラフィックサービス業への転換を目指し、誰と何のために手を組むかに向けて本格始動するということですね。
岡本 コンテンツ産業と呼ばれるものは全てグラフィックサービス業に含まれます。それを市場に対して最適な形で提供することが重要になってきます。コンテンツを作ることはジャグラ会員が得意とする分野です。印刷機を捨てるということではなく、印刷もできることが付加価値になりますので、印刷技術はしっかり磨いていくべきだと思います。
ただ、お客様が印刷物を求めるかどうかは、印刷会社が決めることではなく、お客様が決めることです。多様なパターンがあってしかるべきなのに、紙でしか提案できないということでは成り立たなくなっていきます。
多様なアウトプットに対応していくことを考えると、ビジネスとしてこれから力を入れていかなければいけないのはコンテンツをどう作るかです。コンテンツのあり方、どのように形を変えて提供すればお客様に満足してもらえるかも力をつけなければなりません。

「ジャグラコンパクトDX」のカギは
アナログの熱いハートが重要に

本紙 昨年から取り組みを開始された「ジャグラコンパクトDX」の取り組みについては、すでに具体的な戦略をお持ちだと思いますが。
岡本 「ジャグラコンパクトDX」についても、広島大会が開催される時には明確な数値が発表できる手応えを感じています。「ジャグラコンパクトDX」には、「みんなでレボリューション」というサブテーマがあります。ジャグラは会員同士の信頼が絆で結ばれています。ビジネスの中で同じ方向を向いている人たちだけが集まり、「これをやりましょう」「こちらのグループはこれをやりましょう」ということができます。1社の経済的な負担を減らしてDXに対応していきたいと考えています。
ただ、「ジャグラコンパクトDX」を活用するためには、アナログありきの部分が重要です。アナログの熱いハートがあり、お互いを信じ合える絆の喜びが原点になります。デジタルだけ先にやって、自分たちさえ良ければという考え方では成立しません。
本紙 そうしたハートの部分を会員に伝えていくための情報発信はどのようにお考えですか。
岡本 ジャグラBBや月刊グラフィックサービスを最大限に活用していきます。ジャグラBBは、もはや映像だけではなく、広報委員会のメンバーが全国に散って、いろんな人たちとコミュニケーションしながら、ジャグラのコンテンツ、ノウハウを集めています。今後は講師バンクを作成し、ジャグラのホームページに載せていきます。
本紙 ジャグラに加入すると、そうした情報が入手できるということですね。
岡本 「ジャグラコンパクトDX」に関連して今後は委員会のメンバーが推奨するソフトウエアのリストを作成していきます。もうひとつはジャグラ会員が名前だけを変えれば使える提案書を作成していきます。企画提案書を印刷会社では営業が作っていると思います。それらを持ち寄ってジャグラ会員が無料でお互いのノウハウを活用することで創注に結び付けていきたいと考えています。
本紙 会員に向けたサービスの質を高めていかれるのですね。
岡本 コミュニケーションだけでなく、ビジネスにつながるためのサービスの質を高めていきます。マーケットでの創注と、それを裏づける技術的な情報をジャグラBBや月刊グラフィックサービスでフォローしていきます。
本紙 「ジャグラコンパクトDX」を中心として、会員企業が成長できる情報を発信されていかれることに大きな期待が集まります。
岡本 DX自体にアレルギーのある人も少なくありません。具体的にモノを見せることが重要で、「印刷業界のDXはこうすればできる」と伝えていくことが、グラフィックサービス業への転換の第一歩だと考えています。「絆をカタチにグラフィックサービス業に転換しよう」を実現させていくために創意工夫していきます。
本紙 最後に今後の抱負について教えて下さい。
岡本 ジャグラの将来を考え、次世代にバトンタッチしていくことが私の使命です。継続的にグラフィックサービス業への転換を粛々と進めていくことがあるべき姿だと考えています。ジャグラの場合は若手が育ってきていますから、この先10年は間違いなく安泰だと思っています。

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