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電流協・出版流通改革へ向け業界連携で共同宣言を発表

一般社団法人日本出版取次協会(取協)と一般社団法人電子出版制作・流通協議会(電流協)は、「出版業界でのデジタル印刷活用を推進する共同宣言」を発表した。
同共同宣言は、業界連携のプロジェクトとして取り組むもので、従来の大量生産・大量返品型の出版流通モデルを見直し、デジタル印刷(DSR)の活用と出版DXの推進によって、「読者のために、必要なときに、必要な形で届ける」を実現することを目指している。
背景には出版流通の構造的課題に対する危機感があり、書籍の約35%が返品され推定で年間約130億円もの販売機会が失われている現状を打破するとともに、読者が「ほしい本に出会えない」機会損失をなくし、さらには環境負荷の軽減にもつなげる狙い。業界で結束した今回の宣言は、出版文化の持続可能性を守るための第一歩であり、今後具体策の実行を通じて持続可能な出版エコシステムの構築を図っていく。
出版流通が抱える構造的課題
日本の出版産業では長年、委託販売制のもと大量の新刊が市場に供給されてきた。しかしその裏で返品率は高止まりしている。これは出版各社にとって機会損失と収益圧迫要因であるだけでなく、印刷・輸送・廃棄にかかるコストや環境負荷の面でも大きなロスとなっている。
一方で、本との出会い方が変わるなかでも、書店の現場では「買いたいのに本がない」「再入荷の見通しが立たない」という声が後を絶たない。読者に届かなかった一冊は読者にとっては文化的な出会いの喪失であり、書店や出版社にとっても販売機会の損失となる。こうした現状は出版文化の多様性と持続性を脅かす要因ともなっており、業界全体での抜本的な対策が求められてきた。
デジタル印刷活用を推進する目的
同共同宣言の目的は、出版流通における従来型の大量生産流通による在庫過多・返品率増加などの課題に対応する解決策のひとつとして、小ロットのデジタル印刷(デジタルショートラン:DSR)を活用した新たな流通スキームを確立すること。
国内の一部の出版社ではすでにDSRの活用を拡大する動きが始まっています。書籍のデジタル印刷は2000年代から実現されていたが、当時は印刷品質がオフセットに見劣りし、コストも高かったため、多くの出版社は導入を見送った。
しかし近年のデジタル印刷は、オフセット印刷とそん色のない品質での印刷が可能となっている。小ロットで短納期かつ効率的に製造できるDSRの特性を活かすと、印刷単価だけで見るとオフセット印刷より若干割高になるが、返品・保管・廃棄・在庫管理など出版物流の全体コストを削減できる。すでに取り組んでいる出版社はこの利益効果を享受している(大手を含む10社以上の出版社が活用中:2025年10月時点)。
また、DSRの活用は出版社の利益改善のみならず、過去作品を再価値化できたり、製品サイクル長期化で著者との長期関係を構築できたりと、出版社の経営基盤と出版機能の強化にも寄与している。
取協と電流協による合同プロジェクトについて
流通構造の課題を解決し、DSR活用の好事例を周知共有することで、業界全体でDSR活用を推し進めることができると考え、業界横断のプロジェクトチームが組成された。
同プロジェクトは、日本出版取次協会(取協)内に設置された「デジタル印刷推進委員会」と、取協からの要請により一般社団法人 電子出版制作・流通協議会(電流協)内に設置された「DSR推進委員会」との両委員会による合同プロジェクト(合同PT)。
合同PTと両委員会では、DSRの活用を拡大することにより、読者需要と書店からの注文や在庫数の変動に即応した商品供給を可能にし、品切れや入荷未定の解消、リードタイムの短縮、流通効率の向上を図ることを共同の目的としている。
また、その実現のために必要な業界標準モデルやガイドライン作成を連携して進めている。今回の共同宣言は、これら委員会での検討結果を集約し、業界全体で共有していくための声明となる。
業界団体としてのDSR活用普及に向けた協調的な取り組み
両団体は合同プロジェクトチームを立ち上げて、「DSR標準仕様の策定と提案」、「出版社・印刷会社間の業務効率化」、「DSR出版物の流通ルール整備と見える化」、「出版社課題の解決と導入促進」、「業界内外への周知活動」などを、協調領域として取り組んでいる。
共同宣言をスタートとして出版DXの実現に継続的に取り組む
今回の共同宣言はゴールではなくスタートである。出版社・書店・取次・印刷製造が垣根を越えて連携し、出版DXの実現を推進することで、読者に確実に本を届ける、持続可能な出版エコシステムの構築を目指す。
